歯科医師のための法律相談 デンタルローヤー

今、モンスターペイシェントが増加しています。

 当事務所は歯科医の方のみならず、歯科医師、獣医の方の相談を受けておりますが、どの先生も最近モンスターペイシェントが増加しているとおっしゃいます。

 その理由には何があるのでしょうか。

 歯科医特有の問題としては、歯科医院の増加が大きな理由としてあると思われます。
 厚生労働省の医療施設調査によりますと、歯科医院の数は68,474施設、経済産業省の統計によりますと、コンビニの数は46,905店と、歯科医院はコンビニの約1.5倍存在しています。この背景は、以前よりも歯科医養成学校が増えたことにあります。

 私立歯科大学について国及び日本歯科医師会は定員数の削減を要請しましたが、定数削減は行われていないのが現状です。結果、歯科医師が増加しているために、歯科医院の数もますます増えているのです。

 その結果、歯科医院間では激しい競争が起きています。

 このような激しい競争は、一方では①歯科医師の側に経営面を考慮した治療を余儀なくさせ、他方で②患者様には、歯科医師ショッピングを可能とさせ、またセカンドオピニオンを容易に得られる環境を与えました。

 ①の点から考察すると、歯科医師は治療技術が優れているだけでは患者様を得る事が出来ず、経営面も考慮する必要に迫られ、お客様満足度を考慮しなくてはならなくなりました。その結果、歯科医サイドとしては、患者様の意に沿わない治療に関するリスクを伝えづらい雰囲気になったり、患者様に迎合し易くなったりします。

 ②の点から考察すると、上記のように患者様側は治療のメリットのみの説明を受ける機会が増えて歯科医療に対する期待の程度が高くなり、もっとよい治療方針を求めてドクターショッピングをする方も多くなりました。後医によるセカンドオピニオンを得て前医よりもメリットを強調される機会が増えます。加えて、インターネットの普及で治療方針について様々な選択肢を与えられ、今の治療方針が一番良いものなのか悩む機会も増えます。

 このようなことが繰り返されることによって、患者様は歯科医療に対するリスクに鈍感になり、メリットの期待が高まり続けます。
 そして、患者様が認識していなかったリスクが顕在化したり、期待した高いメリットが実現出来なかったりした場合にクレームが発生し、歯科医の目からそれを見たときにモンスターペイシェントと捉えることが増えるのだと思います。

 上記のように、モンスターペイシェントの増加に伴って、歯科医・歯科スタッフの方々から「対処法を知りたい」との要望は高まっているようです。

 当事務所では、歯科を始めとした数多くの医療案件処理の経験をもとに、モンスターペイシェントの対処法という講演会も行っております。
(直近の講演会開催のご報告につきましては、前回のコラムも併せてご覧ください)
 その講演では、モンスターペイシェント増加の背景を切り口に、診療予約から治療後までの時系列に沿って、モンスターペイシェント化する兆候や、スタッフを含めた対処方法、トラブル時にやってはいけないことをお話いたしました。
 また、モンスターペイシェントの他にも、広く医療の法律問題に関するテーマでのお話もさせていただいております。
 講演会の開催をご検討されている方は、お気軽に当事務所宛にメールにてお問い合わせください。