解決事例集
事例11-抜歯の必要性の有無をめぐって、患者様が担当歯科医師に対し損害賠償請求訴訟を提起した事例(東京地判H14.5.27)
患者様は、平成11年1月26日に右下6番、7番の急性発作歯周炎と歯肉膿瘍を訴えて歯科医院を受診し、同年12月9日まで、歯肉膿瘍の排膿、消炎処置、投薬治療等を受けた。
患者様は、平成12年4月3日に右下奥歯の痛みを訴えて、歯科医院に来院したところ、担当歯科医師は、右下奥歯の状態を見たのみで、漠然と右下奥歯を抜歯するとのみ説明した上で、レントゲン写真も撮らず、手や器具で触るなどして動揺を確認しなかったにもかかわらず、従前の治療の経緯から、右下7番を分割抜歯した。
患者様は、歯科医院の開業者である担当歯科医師に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。
判決日 | 患者様の特性 | 請求額 | 認容額 |
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東京地判 H14.5.27 |
女性 | 500万円 | 慰謝料 150万円 |
争点 | 争点に対する判断 | ||
①抜歯する必要がない歯を抜歯した過失の有無 | <結論> 過失があるといえる <理由> 歯科医が抜歯治療を行う場合、その必要性を慎重に検討すべきところ、担当歯科医はレントゲン検査や、手や器具で触れて動揺を確認することをせず、従前の治療から考えても抜歯が必要になるほど状態が悪化していたとは考えにくい歯を抜歯した。 |
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②本件抜歯についての説明義務違反 | <結論> 説明義務違反がある <理由> 担当歯科医師は、患者様に対し、抜歯した場合の利益・不利益についての説明や、抜歯の必要性の具体的な説明をせず、対象の歯を抜歯することのみを告げたにすぎなかった。 |
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③損害 | 本件抜歯後2週間の間、右下歯肉の腫れや右こめかみの痛みがあり、咀嚼能力が衰えるなど悪影響が生じるが、外見上の醜さは特段目立たない。 また、咀嚼が困難になるなどの生活上の不利益や、労働能力への直接的影響もなく、補綴が可能である。 担当歯科医は患者様宅を訪問し謝罪している。 |