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解決事例集

事例13-誤抜歯があったとして、患者様が被告歯科医院の開設管理者に対し損害賠償請求訴訟を提起した事例(東京地判H16.9.1)

患者様は、平成14年6月1日、歯科矯正のため、甲矯正歯科を受診し、患者様の希望等もあって、左上および下顎左右については第1小臼歯(以下「4番」という。)を、右上については補綴処理された第2小臼歯(以下「5番」という。)を、それぞれ抜去することになった。  
同月10日、患者様は、右上5番、左上4番、右下4番及び左下4番を抜去するよう指示した被告歯科のA歯科医院宛の紹介状及びパントモ(歯のレントゲン写真)を持参して、被告歯科を受診した。しかし、A歯科医師は、左上、右下、左下の各4番の他、本件紹介状の指示とは異なり、右上についても4番を抜去した。  
そこで、患者様は、被告歯科の開設管理者とされていたBに対して、損害賠償請求訴訟を提起した。

判決日 患者様の特性 請求額 認容額
東京地判
H16.9.1
女性
(昭和48年生)
396万円 治療費 20万円
慰謝料 50万円
弁護士費用 10万円
争点 争点に対する判断
①Bの使用者責任及び債務不履行責任の有無。 【債務不履行責任】
<結論>
A歯科医師が、紹介状の記載を見落とし、抜去すべき歯を誤信したまま抜去したことについて過失があることは明らかである。

【Bの使用者責任の有無】
<結論>
BとA歯科医師との間には使用関係があり、Bには使用者責任がある
<理由>
Bは平成9年初め頃に毎月金員の支払いを受ける約束で被告歯科の開設管理者になることを承諾したというのであるから、被告歯科において管理責任を負う立場に就くことを認識・了解していたものと認められ、A歯科医師が被告歯科に勤務しているという関係にあった。
②損害 【治療費】
患者様が、残存した補綴処理された歯にセラミックコーティングを施して天然歯と同様の外見を維持したいと考えるのは当然であり、A歯科医師の過失と相当因果関係のある損害である。
【慰謝料】
患者様は、歯列や咬合の改善のみならず、審美的にも自らの歯を良好にするために、歯科矯正を受けたところ、抜去を予定していなかった天然歯を抜去され、抜去を希望した補綴処理された歯が残存することになったことによる精神的苦痛は小さくない。また、A歯科医師が抜去すべき歯を間違った原因は、初歩的で単純な不注意によるものである。 ただし、右上4番が抜歯され、右上5番が残っても、歯列及び咬合の点では問題はなく、セラミックコーティングを施せば、審美上の問題も相当程度改善される。
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