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解決事例集

事例14-親不知の抜歯後、舌の先端部分に麻痺が残ったとして、患者様が歯科医院に対し損害賠償請求訴訟を提起した事例(東京地判H15.9.14)

平成10年7月22日、患者様は、歯科医院を受診して、右下智歯近辺に痛みがあることなどを訴えた。そこで、担当歯科医師はパントモグラフィーの撮影(パノラマX線撮影)をするなどした上、患者様に対し、智歯については左右上下の4本とも抜歯するのがよいと説明し、患者様の了解を得た。  
担当歯科医師は、同月23日、患者様の左上智歯及び左下智歯を抜歯し、同月28日、患者様の右上智歯及び右下智歯を抜歯した。  
患者様は、平成10年9月21日、担当歯科医師を受診し、舌の右側先端部分に麻痺があると訴えた。このような訴えは、患者様が右下智歯を抜歯されるまではなかった。また、患者様は、平成12年5月8日及び同年6月9日にも担当歯科医師を受診し、上記の麻痺に変化がないと述べた。さらに、患者様は、平成13年4月5日、舌右半側のしびれを主訴として、担当歯科医師から紹介を受けた甲病院を受診し、その後、同病院に通院して治療を受けた。  
患者様は、歯科医院に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。

判決日 患者様の特性 請求額 認容額
東京地判
H15.9.14
男性
(昭和27年生)
6689万2586円 0円 (棄却)
争点 争点に対する判断
右下智歯抜歯の際の担当歯科医師の過失により、患者様の舌神経が損傷されたか。 <結論>
過失があったとは認められない
<理由>
歯科医師が、舌神経の損傷を避けるべき注意義務を全うするために、どのような方法をとるべきであったかについて検討するに、この点につき患者様の主張は2つある(①右下智歯の歯根を上下に分割するのみでなく、さらに舌側と頬側とに分割すべきであった、②抜歯に困難を伴うときには、歯槽骨の一部を除去して被抜去歯の抜去方向を変えるべきであった)。  
①に関して、患者様の右下智歯は水平埋伏歯であり、歯根が2根あって、それらが上下に位置していたのであるところ、このような場合においても患者様主張の如く分割するべきとする資料は提出されていない。
②についても、本件において、歯槽骨の一部をさらに除去して右下智歯の抜去方向を変えるべきとする資料は提出されていない。そうだとすれば、患者様の主張するような義務を担当歯科医師が負っていたということはできない。
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