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解決事例集

事例19-矯正治療の際、診療契約上の義務違反があったとして、患者様が担当歯科医師に対し損害賠償請求訴訟を提起した事例(東京地判H15.7.10)

患者様は、平成10年2月13日、甲矯正歯科医院を訪れて、被告らとの間で全顎を矯正して上下顎全突を解消する治療を受ける旨の診療契約を締結した。  
患者様に対する矯正治療は、平成11年11月6日まで、動的矯正が行われ、その後、同日から平成14年1月8日まで動的矯正装置に代えて歯の裏側に固定式保定装置を取り付け、保定が行われた。  
患者様は、平成14年1月8日同医院における最後の診療で、固定式保定装置を取り外された後、帰宅して、固定式保定装置が装着されていた上下切歯の裏側と確かめたところ、上切歯4本の裏側が虫歯のようになっていることを発見した。そこで、患者様は翌9日、担当歯科医師Bに電話で問い合わせた後、別の歯科医師を受診したところ、上の歯のうち左右中切歯及び左右側切歯において、歯の中段付近の歯と歯の隣接面(隣の歯と接着している部分)に象牙質にまで達する齲蝕(虫歯)が進行しており、とりわけ左上中切歯の一部は歯根膜炎を発症していることが判明した。  
そこで、患者様が担当歯科医師に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。

判決日 患者様の特性 請求額 認容額
東京地判
H15.7.10
女性
(昭和54年生)
410万5000円 慰謝料 50万円
弁護士費用 5万円
争点 争点に対する判断
担当歯科医師らは、十分にブラッシング指導を行うなど口腔内の衛生環境を良好に管理すべき義務に違反したか。 <結論>
診療契約上の義務違反があった
<理由>
担当歯科医師らは、患者様に対し、保定期間中においては、今までと変わらず歯磨きをするようにと述べた程度で、それ以上に特にブラッシング指導を行うことはしなかった。この義務違反がなければ、本件虫歯の発生を防止することができたと推認するのが相当である。
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