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解決事例集

事例2 - 治療後、他院において1歯の抜歯の必要性と歯周病の進行を指摘され、それが3年間の金属除去治療のせいであるとして、患者様が慰謝料50万円を請求した事例

金属アレルギーのため、手に水疱の症状が出ているので、すぐに歯科金属を外して欲しいと来院。 歯科医師は、大学病院の皮膚科にて金属パッチテストを依頼したところ、亜鉛、スズに陽性反応があったため、金属除去開始。 3年間かけて、すべての金属を除去し、症状は軽快し、治療終了。その後、他院において、1歯の抜歯の必要性と歯周病の進行を指摘され、それが、3年間の金属除去治療のせいであるとして、慰謝料50万円を請求してきた。患者様は医院に毎日電話をかけ、時には医院に来て大声を出すなどクレーマー化したため、歯科医師は50万円を支払った。 その後、患者様は弁護士を雇い、さらなる慰謝料を請求してきた。

患者様の主張するクレームの内容・請求内容 クレーム内容
①歯科金属除去に関し、具体的治療内容及び治療の見通しについて十分な説明がなかった、
②皮膚科の検査後、十分な検討をすることなく金属除去を行った、
③金属除去により皮膚疾患が改善しなかった、
④3年間通院していたのに、結果として1歯の抜歯、歯周病に罹患したのは、治療行為のミスであると主張。
請求内容
慰謝料500万円と治療費の返還請求
解決内容 請求の取り下げ
理由
カルテに、
①「金属除去だけでは必ずしも良くならない、たばこ等の生活習慣の見直しも必要と説明」との記載があったこと、クレームまで計50回通院を続けていたことから、一度も治療方針について説明を受けず、経過も良くならないまま通院を続けたとは考えがたい、
②皮膚科医とは、3年間の治療中複数回連携を取っており、皮膚科医の診断内容に沿って金属除去を行っている、
③症状改善したため治療を終了し、感謝の手紙も送られてきていた、
④抜歯が必要な1歯は、来院時より無髄歯であり、咬合圧が強いため歯根破折を起こし、通院中にも抜歯を勧めたが、患者様が強く拒んだだけであることがカルテに書いてあった、
⑤カルテに来院時から歯周病が進行している、生活指導、歯磨き指導も適宜行っていることの記載があったため当院の過失ではないと主張。
トラブルに至った原因 本件クレームのきっかけは、後医の発言と思われる。後医から「前の先生はなぜ、この治療をやらなかったのかなぁ」と聞き、前医の治療行為にミスがあったと思い込み、請求に至った。また、本件のように、歯の管理状況が悪い患者様こそ、満足行く結果が得られないため、クレームに至る場合が多い。本件は、歯科医師に過失がないにもかかわらず、事案の沈静化のために50万円を支払っているが、それが故に、患者様に火をつけ、弁護士まで雇い、高額な慰謝料の請求となった。
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